Япония: цивилизация, культура, язык 2022

ЯПОНИЯ: цивилизация, культура, язык 2022 672 徴としてあるのがアルツィバーシェフの『労働者セイリ オフ』の末尾、セイリオフが劇場で銃を乱射する場面な のである。 このように、アルツィバーシェフの『労働者セイリオ フ』の衝撃的な末尾の場面は、抵抗の術も奪われた日本 の大正期の無産者階級の行動モデルとして、人々の脳裡 に焼き付いたと言えるだろう。 4. アルツィバーシェフの『作者の感想』 金子文子のアルツィバーシェフ受容はこのような「直 接行動」に文子を駆り立てただけではない。爆発物取締 罰則違反と大逆罪によって獄中生活を送る中でもアルツ ィバーシェフの『作者の感想』 7 を読んでいる。そして、 1925 年 5 月 21 日の立松判事宛ての書状に「あるロシア作 家の論文集」からとして次の文章を引用している。 生きることを欲する人間に、生きることを欲しない やうに説教することは滑稽である。人生が直接の満 足を与へる人間に向つて、彼には生きることが極め て不愉快であらうと語る事は滑稽である 8 。 これは『最後の一線』が自殺の宣伝をしているという 批評家の意見に対してアルツィバーシェフが書いた「自 殺の伝染病」という評論の一節である。『最後の一線』の 主人公ナウーモフは、人生は苦痛の連続であると認識し、 それを断ち切るために自殺を広めていく。このナウーモ フを生み出したアルツィバーシェフが書いた先の言葉を 踏まえて文子は立松判事に次のように説いている。 7 『泰西随筆選集 (1) アルツィバーシェフ著 作者の感想』 ( 馬場哲哉訳、 人文会、 1924 年 11 月 ) 8 注7の p.136

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