Япония: цивилизация, культура, язык 2022

ЯПОНИЯ: цивилизация, культура, язык 2022 670 このように、アルツィバーシェフの『労働者セイリオ フ』を感激を以て読んだ、という記述は注目に値する。 すなわち、文子が関心を持ったのは世間の若者たちが関 心を示した「サーニズム」ではなかったのである。では、 この『労働者セイリオフ』とはどのような小説なのか。 あらすじを以下に述べる。 この小説に登場する労働者セイリオフとは、実は大学 生のトカリオフのことである。彼は革命運動に携わって いたが失敗し、捕えられて死刑宣告を受ける。しかし、 監獄に送られる最中に脱走して貧民街に身を隠す。その 偽名がセイリオフなのである。貧民街には様々な人間が 暮らしているが、不幸な彼らと接触しながらセイリオフ は世の中に対する憎悪と復讐の念を強めていく。そして、 遂に官憲に見つかってしまい、追われて劇場に逃げ込む。 そこで彼は劇場を埋めていた観客 ―― それは日々接触す る貧しく不幸な人々ではなく着飾った金持ちたちであ る ―― に向けて銃を乱射する。その様子は次のように記 される。 彼が今迄の生涯に自らも嘗め他に就いても経験した屈 辱と苦悩と生命の奪掠とに対する復讐を、彼は今冷酷残 忍な愉快を貪り味いつつ遂行するのであった。 そして、セイリオフは「彼以外の誰人も見ることのでき ない何物かを見詰めているかの様な」表情を浮かべ、 同志でありすでに絞首刑となっていた妻と同じく処 刑される。 このようなセイリオフのどこに文子は「感激」したの だろうか。 ――― 言うまでもない、まさにこの末尾の場 面に相違ない。これまでに味わってきた人生の屈辱、苦 悩、生命の掠奪に対して「復讐」を成し遂げているセイ リオフの姿に自己を重ねたのであろう。もちろん、これ

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